02章 / オリジナルフィクション

Red Signal ― 記憶への合図

見過ごせない存在になる夜。

黒いハーネスと長い赤いグローブを合わせた赤いエナメル衣装
Dominatrix Duo — red look · 写真:IRIS12DDAの販売コレクションより。

真夜中、駅のすべての画面が消えた。ひとつだけを残して。そこには赤い線が点滅し、短い言葉が浮かんでいた。「光を追って」。

アイリスは、艶やかな深紅の衣装と長いグローブで、無人のホームへ足を踏み入れた。黒いハーネスの線が、肩の輪郭をくっきりと描いている。何年もかけて気配を消す術を学んできた彼女が、この夜だけは、誰よりも目立つ必要があった。

線路の向こうで、配達人がケースを抱えていた。中にあるのは、地区から失われた記録。名前、写真、手紙。人々がそこに暮らしていた、小さな証拠だった。アイリスが時計の下の光だまりへ歩み出た隙に、配達人は開いた通用口へ滑り込んだ。

画面が再び灯った。千枚もの家族写真が、駅の壁いっぱいに広がっていく。アイリスは微笑み、踵を返して朝一番の列車へ消えた。あの合図は警告ではなかった。思い出すための、招待状だった。

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