七年間、灯りの消えていた劇場。今夜、その照明がひとつずつ戻ってきた。幕の裏でエージェントのライラは無線を確かめ、細い光の中へ進んだ。黒い艶がシルエットを縁取り、金色のバックルに舞台の灯りが映った。
任務は、行方を追われる証人が通用廊下を抜けるまで、観客の視線を引きつけること。ライラはマイクを上げた。最初の歌声がホールを満たし、背後で扉が開く小さな音を包み込んだ。
バルコニーで赤い灯りが点滅した。出口が塞がれた合図だった。ライラはリズムを崩さず舞台袖へ向き直り、照明係にサインを送る。上階の通路に、白いスポットライトが道を描いた。相棒には、それで伝わった。
最後のコーラスが響くころ、証人は安全な場所へたどり着いていた。総立ちの客席を前に、ライラはマイクを下ろした。観客にとっては忘れられない公演。脇の扉を抜けた一人にとっては、帰る道を取り戻した夜だった。
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