海岸の古い送信所は、もう誰も使っていなかった。ところが冬のもっとも長い夜、そこから同じ旋律が繰り返し流れ始めた。ニカにはすぐに分かった。子どものころ、姉が作った曲だった。
紫のキャットスーツをまとい、ニカは灯室へ続く金属の階段を上った。艶やかな表面に月明かりが断片となって映り、下の海は折り重なる黒い絹のようだった。一段進むごとに、旋律が鮮明になっていく。
頂上で見つけたのは、忘れられた機械に丁寧につながれた緊急用の発信機だった。その下には手描きの地図。姉は島にたどり着いていた。この信号が、最後の救助艇を霧の向こうへ導いていたのだ。
ニカは周波数を合わせ、マイクに向かって言った。「聞こえているよ」。遠い海の上で、小さな光が応えた。世界から危険が消えたわけではない。ただ、ほんの少しだけ、孤独ではなくなっていた。
衣装の販売ページへ ↗